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肺癌細胞診断 改訂版 形態とその臨床  

加藤 治文 監修/池田 徳彦 編 /長尾 俊孝 編 /工藤 玄恵 編 

定価(本体6,800円+税)   発行日:2013/11/30   ISBN:978-4-906714-12-4
A4判/160頁

・肺癌の確定診断に用いる様々な検査方法をはじめ,組織分類に基づいた各病変における診断の実際まで,最新の知見を交えて、豊富な写真と症例で解説しています.
・対象となる読者は,肺癌診療に携わる臨床医・病理医,また,臨床検査技師(細胞検査士)といった方で,日々の診療・検査精度を高めるのに役立つ内容となっています. 

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序文

改訂版の序

 肺癌細胞診断の改訂に当たって本書を振り返ってみると,本書作成の当時の若き当事者たちの肺癌撲滅に対する意気込みが懐かしく思い出される.我が国の肺癌発見,診断,治療技術は,当時世界をリードするものと自負していた.1960年に創立された日本肺癌学会は肺癌研究の組織として世界最初のものであった.そして先人たちの並々ならぬ努力によって肺癌の体系化が築かれていった.1960年代には我が国で気管支ファイバースコープが開発され,1975年には我が国独自のガイドラインともいえる「肺癌取扱い規約」が作られた.我が国ではこの規約に沿って,発見,診断,手術などが行われてきたので世界が一目を置く質の高い肺癌診療が実現したのであった.1974年東京医大外科では犬を使った発癌実験が行われ,カロリンスカ研究所との協同研究でDNA分析の結果,扁平上皮化生は異型化生を経て扁平上皮癌に至ることが証明されたのであった.1975年に厚生省の研究班「池田班」で「早期肺門部肺癌の診断体系の確立」が取り上げられ,全国の著名な肺癌外科医,細胞診・病理専門家が一堂に会し,この目的に向かって検討が加えられた.喀痰細胞診では,扁平上皮癌の発癌過程の一病態と考えられた扁平上皮化生から異型(軽度,中等度,高度)化生や上皮内癌の細胞像の細胞学的基準やその扱い方などが決められていった.本書の初版当時は,まだまだ国民の喫煙率が高く,発見される肺癌の50%近くは扁平上皮癌であったので喀痰細胞診は中心型肺癌発見と診断に重要な役割を担った.1960年来,東京医科大学外科学第一講座で開発してきた肺癌診断手法を別表に示した.

 1989年の初版刊行から,すでに25年が経過したが,この間1998年に中国語に翻訳され,肺癌の細胞診断学の発展にいささかなりとも国際的な貢献ができたと思っている.しかし,この25年の間に国民生活の変貌とともに肺癌疫学に大きな変化が生じ,それに伴う組織型分類の改定,病期分類の改編,発見法の変革,診断技術の変革が起き,免疫染色を含む分子生物学的診断法が一層進歩するに至った.細胞形態像は初版当時と何ら変化することはなかったが,この間には日本肺癌学会,日本臨床細胞学会の発展,国際細胞学会や国際肺癌学会の変革がみられた.初版時に推薦の言葉を頂いた私の恩師である早田義博教授(前東京医科大学第一講座,前世界肺癌学会会長)とMagnus Nasiell教授(Kalorinska Institute, Sabbatsberg Sjukhus),増渕一正先生(日本臨床細胞学会創立者,前国際細胞学会会長),George Wied教授(国際細胞学会創立者・前会長),Haine Hansen教授(国際肺癌学会初代事務局長),海老原善郎教授(前東京医科大学病理学,初版執筆者),そして本書の出版にご尽力いただいた福島茂氏(前朝日新聞社)など数多くの著名な方々が他界された.初版に協力を頂いた諸先生方もそろそろ高齢者の仲間に入りつつある.小中千守先生(現国際医療福祉大学教授,化学療法研究所附属病院副院長),河手典彦先生(現早稲田大学教授),米山一男先生(前東京医科大学霞ヶ浦病院教授),黄明賢先生(現高雄医学院内科教授(台湾)),斉藤誠先生(現東京医科大学茨城医療センター教授),高橋秀暢先生(現東京医科大学八王子医療センター教授)である.

 医学の歴史は紀元前3000〜5000年前の古代エジプトに芽生えた.その後,古代ヘブライ,ギリシャ,ローマ医学へと継承され,中世を経て近代に繫がるが,急速な進歩はつい近年の出来事である.それが最近では益々スピードが速まっている.近年の遺伝子や蛋白を含めた分子生物学の進歩やITの進歩に伴って肺癌診断は大きく変貌しようとしているが,この大きな潮流の変化を踏まえて,「新しい肺癌細胞診断学」へと大改編する運びになった.

 初版の編集理念は“臨床医が形態学を理解しよう,細胞診断医や細胞検査士が臨床を理解しよう”であった.なぜ外科医が細胞診をしなければいけないのか?である.本書も前回と同じく提示した細胞は同一患者から得られたもので,臨床情報との関連を重視し,病理医,細胞専門医,細胞検査士には出現細胞起源の臨床背景をわかりやすく解説し,一方では臨床医には理想的な細胞検体採取方法や臨床所見から推察できる細胞像を解釈しやすく編集をした.病理組織分類については,今後我が国でも採用されつつある新しいWHO分類の解説を加えたが,細胞像の分類は現状を反映して旧分類に従った.新病理分類による細胞診分類は今後の課題とした.

 昨今の医療はどんどん専門科に細分化され,“自分の専門領域だけに忠実を尽くせば良い”という時代になった.これも時代の流れで良しとせねばならないが,初版の理念は忘れがたい.我々医療従事者は良い医療を追及しなければならない.見落とし,誤診のない正しい診断のもとに良き治療が成立するのである.臨床医が自らの画像診断のもとに,自らの診断手技で細胞を採取し,自らの鏡検で細胞を観察できれば,いろいろな矛盾を克服できるし,納得のいく診断を得ることができる.同様に細胞診断医,検査士がもっと臨床的な情報を得ることができれば診断能の向上が図れる.端的に言えば,“肺癌専門医は基礎,臨床に精通すべき”である.この理念はこの改訂版にも変わることがない.本書が肺癌の細胞診断学にお役に立てれば幸甚である.

 今後医学・医療の激変が予測される中,細胞形態学も例外ではなく,コンピュータ化されていくことは推察に難しくない.細胞形態学に細胞機能が同時に評価されれば,診断はより正確度を増す.今回,この考えから遺伝子情報や,蛋白質分析情報も加味した.形態のデジタル解析にはITが得意であるし,遺伝子の解析や機能を表現する膨大な蛋白量の解析にはスーパーコンピュータが出番である.そのような時代の到来にどのように対応するかが今後の課題である.

 本書の執筆に当たり,故福島茂氏を含む多くの方に深甚なる謝意を表する.

2013年(平成25年)9月

東京医科大学 名誉教授
新座志木中央総合病院 名誉院長
国際医療福祉大学 教授
加藤治文

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目次

総論
1.肺癌の組織診断:WHO分類
2.肺癌の確定診断法
3.肺癌のTMN分類
4.形態学からOmicsへ:細胞レベルへの応用

各論
1.腺癌
2.扁平上皮癌
3.小細胞癌
4.大細胞癌
5.多形,肉腫様あるいは肉腫成分を含む癌
6.カルチノイド腫瘍
7.腺様嚢胞癌
8.粘表皮癌
9,転移性肺腫瘍

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■M.T.様 30代女性(臨床検査技師・細胞検査士)
 普段業務中には見る機会が少ない臨床Drの検査手技・CT画像がたくさんのっていて,診断までの一連の流れもわかり,とてもおもしろかったです,セルフトレーニングや教育用にも使います.

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